SS中編 『君だけを』 第10話

…やっと書き終わりました。第10話。
実はかなり前に書き終わったのですが、アップする前にデータが飛んでしまい…。
泣きながら復旧を試みたのですが、半分まででした。
真っ白な原稿が上書きされてるのを見た瞬間の気持ちったら、無いですね(ノД`)

そんな事件もありながら、どうにか書きあがった第10話。

続きよりどうぞ!

あと、皆様、拍手ありがとうごさいます。
励みになっております。





----side H

なのはちゃんの幸せ。
フェイトちゃんの幸せ。
…私の幸せ。

絡み縺れた糸を解くいていく。
全てはあるべきところに落ち着くべきなのだ。
そう言い聞かせながら。

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聞きなれた着信音が部屋に響く。
ディスプレイを見れば『なのはちゃん』。

「もしもし?」
『あっ、はやてちゃん?』
「なんや、どうかした?」
『ううん、ただ声が聞きたいなって。迷惑だったかな?』

にゃははと笑う声。
決まってそう、なのはちゃんがこうしてただ声が聞きたいと言ってくる時は
一人で考えることに疲れた時。
きっと無意識のうちにフェイトちゃんのことを考えてしまうのだろう。
別れてすぐはよくこうして電話が掛かってきた。
あの時は頼られていることが本当に嬉しくて。

小一時間ほどたわいもない話をした。


「なのはちゃん、明日やねんけど、逢われへんかな?」
『大丈夫だよ?』
「ほな、明日、学校の前で待ってるわ」

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少し早く待ち合わせ場所に着いた。
なのはちゃんは時間ぴったりにやって来た。

「ごめんね、待たせたかな?」
「いや、大丈夫。時間ピッタリや」

ふふっと顔を見合わせて微笑み合う。

「今日はどうするの?」
「エスコートは任せてくれへんかな?」

少しきょとんとして、それから笑顔で

「うん、じゃあよろしくね!」

そう言って左手を握られた。
その行為にいささか反応が遅れて

「?手繋がないの?」
「へっ?あ、うんそうやね」

その右手を握り返しながら、ツキンと胸が軋んだ。

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「まずはここからや」

やって来たのは遊園地。
二人の初デートの場所。

「さぁ、行くで!なのはちゃん!!」
「うん!」

一通り乗り物に乗って、ベンチで一息いれる。
なんと言っても時間がないのだ。
休む間もなく、乗り物に乗りまくった。
隣でなのはちゃんも少し疲れた顔。

「ごめんな、なのはちゃん。大丈夫?」
「にゃはは、大丈夫だよ」
「そか。ほんなら次の場所行こか」

手を引いて遊園地を後にする。

「ほえ?今日は一日遊園地デートじゃないの?」
「うん、まだまだ行きたい所あるんよ。
その前にちょっとお茶しよか」

何度もなのはちゃんと通ったお店。
『ここのコーヒーが一番なんだよね。うちには敵わないけど』
そう言いながら笑う彼女の笑顔は、昨日の事のように思い出せる。

それから喫茶店を出て、ウィンドウショッピング。
今はもう古ぼけて、それでも外さずにいるストラップは、お気に入りの雑貨屋さんでお揃いで買ったもの。
高校生の頃、カバンに付けていたぬいぐるみのキーホルダーは、このゲームセンター。

一つ一つを噛み締めるように、思い出の場所を巡った。
途中でなのはちゃんが気付いたようで、

「はやてちゃん、これって」

そう話し掛けて来たけれど、小さく首を振った。
なのはちゃんはそれ以上聞いては来なかった。

日が傾き始めて、辺りを紅に染める頃、私達は臨海公園に着いた。

「今日はありがとう、なのはちゃん」
「…」

真意を探るようなそんな眼差し。

「そんな目で見やんとってよ」

はははっと笑う。
それも宙を舞った。
ふぅっと一息付くと、腹をくくった。
真っ直ぐその瞳を見つめ、

「あんな、なのはちゃん。お願いがあるんや」

蒼い瞳が揺れる。

「私と別れて欲しい」
「! …どうして?!」
「私はなのはちゃんを幸せにする自信がないんよ。
ついでに私の幸せはなのはちゃんの隣に無いって気付いたから。だからや」
「そんな…」
「今まで幸せやなかったとかとは違うよ。
大事にしてくれてたんも分かってる。
でもな、それは多分『ごっこ』だったんよ」

綺麗な蒼い両の瞳には、今にも溢れそうなほど、雫が溜まっている。
それに気づかない振りをして

「この前、フェイトちゃんに会ったやろ?
なのはちゃんは何にも言わへんかったけど、私は気づいてたよ。」
「・・・ごめんなさい」
「ええねん、ええねん。私を心配させへんようにって思ってくれたんやろ」

左右に手を振りながら、理解あるふりをした。

「でも、その時のなのはちゃんを見て、本当の気持ちにも触れた。
それで分かったんや。敵わへんって。
フェイトちゃんの事、まだ好きなんちゃう?」
「そんな事!」
「ふふっ、声が聞きたいって電話掛けて来るときは、フェイトちゃんの事を考えて、行き詰まってる時。
付き合いも長くなると、本人が気付いてない事も気付いてしまうんよ」

困ったように笑いながら続ける。

「だから、ここからは『親友』の『高町なのは』と『八神はやて』に戻ろ」
「はやてちゃん…」

ふぅっと一呼吸おいて、今出来る最高の笑顔で、

「さて、ここで親友から朗報。
フェイトちゃんも何か答えを出したみたいや。しかも明日の朝に帰るらしいよ」
「フェイトちゃんと話したの?」
「ちょっとだけね。確認したい事もあって。
さて、ここからどうするかはなのはちゃん次第や」
「…」

少し冷たい風が頬を撫でる。

「そろそろ寒くなってきたし、お開きにしよか。
悪いけど、なのはちゃんは先に帰ってくれるかな?」
「はやてちゃん…」

なのはちゃんの右腕が私に触れようとした。

「お願いや、一人にして…」

そういうと一瞬戸惑ったあと、行き場を無くした腕は、だらりと下ろされた。

泣くな、泣くな、泣くな。
もう少しの我慢や。

じゃあ、最後に一つだけ。
そう呟くと
「はやてちゃんは『ごっこ』って言ってたけど、そんな事ない。
ちゃんと好きだったし、大事だったよ。
いつもありがとう。支えてくれて。
それと、ごめん…ね」
「謝って欲しくない」
「…うん、ありがとう。
それじゃあ、帰るね」

振り返って、来た道を戻る後ろ姿を見送りながら

「頑張ったよな、私」

さっきまで我慢していた涙が、地面を濡らしていく。
でも、いつまでも感傷に浸っているなんて私らしくない。
両の瞳から溢れる涙を、ゴシゴシッと拭うと

「私も幸せになる!新しい『八神はやて』の始まりや」

そう強がりを叫んだ。

テーマ : 二次創作小説(版権もの
ジャンル : アニメ・コミック

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まとめteみた【空蝉のうた】

…やっと書き終わりました。第10話。実はかなり前に書き終わったのですが、アップする前にデータが飛んでしまい…。泣きながら復旧を試みたのですが、半分まででした。真っ白な原稿が上書きされてるのを見た瞬間の気持ちったら、無いですね(ノД`)そんな事件もありながら...

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プロフィール

秋水

Author:秋水
秋水と書いて「あきみ」と読みます

リリなのシリーズは「無印」からリアルタイムで追いかけています
なのフェイなの
大好きです(*^ ^*)

しかし書き始めると、難しいものですね(^-^;
日々、精進です!
よろしければお付き合いください♪

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